本日7月14日より家賃支援給付金の申請受付がスタートしました。
この記事では、顧問をさせていただいているお客様から質問が多かったもの、SNSなどで議論となっていた論点を抜粋してご紹介していきます。
この記事は、家賃支援給付金申請サイト・申請要領・給付規定を引用しています。一部当事務所独自の見解も盛り込まれていますので、実際に申請される際は、サイトや申請要領をご自身でお読みいただき、ご自身の責任で行なってくださいm(_ _)m
- 家賃支援給付金ってなに?
- 家賃支援給付金は誰がもらえるの?
- 家賃支援給付金は法人一律600万円・個人一律300万円もらえるの?
- 共益費・管理費は対象ですか?
- 契約関連費用(更新費、礼金、解約違約金等)や水道光熱費も対象ですか?
- 家賃支援給付金の申請に必要な書類は?
- 家賃支援給付金の対象外となる契約はどんなものがありますか?親族間の貸し借りはダメと聞きました。
- 家賃支援給付金は社宅分も支給対象ですか?
- フリーランスで、自宅兼事務所にしています。家賃は、家賃支援給付金の対象ですか?
- 2020年4月から事務所を借りました。支給の対象ですか?
- 大家(貸主)との関係で気をつけることはありますか?
- フリーランスとして活動していますが、雑所得として確定申告していました。この場合は家賃支援給付金の支給対象外ですか?給与所得はどうなりますか?
- 2019年に創業したばかりだから比較する去年の売上がない。家賃支援給付金はもらえない?
- コロナ休業の影響で資金繰りが厳しく、家賃が未払です。滞納の場合も家賃支援給付金の対象となりますか?
- 便利なインデックス集
家賃支援給付金ってなに?
コロナの影響で、2020年5月以降も去年と比べて売上が激減している場合に、事務所等の家賃負担を軽減するという趣旨です。下記の、経産省のパンフレットが1枚にまとまっていてわかりやすいです。
家賃支援給付金は誰がもらえるの?
法人は、資本金10億円未満の中堅企業、中小企業、小規模事業者を対象とし、医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人など、会社以外の法人も幅広く対象です。
個人事業者は、フリーランスを含み、幅広く対象とされていますが、現時点では「事業収入がある人」です。確定申告時に「事業所得」としているかどうかがポイントです。
家賃支援給付金は法人一律600万円・個人一律300万円もらえるの?
もちろん一律600万・300万ではなく、最大600万、300万です。申請日の直前1か月以内に支払った賃料などをもとに、下記のような方法で算定された金額が給付されます。
法人の支給額算定方法
給付額の算定例
個人の支給額算定方法
給付額の算定例
共益費・管理費は対象ですか?
賃料だけでなく、共益費・管理費も対象です。
ただし、共益費および管理費が、賃料について規定された契約書と別の契約書に規定されている場合は、対象外です。
契約関連費用(更新費、礼金、解約違約金等)や水道光熱費も対象ですか?
賃料・共益費・管理費以外の費用・支出は対象外として、FAQに対象外の経費が例示されています。
ただし、契約書において、賃料と、上記のような費用が項目ごとに区分されておらず、「賃料」として一括計上されている場合、給付額の算定の基礎に含めてOKのようです。
参考:よくあるご質問:給付対象者について
https://yachin-shien.go.jp/faq/01/index.html
家賃支援給付金の申請に必要な書類は?
法人・個人で似通っていますので、この記事では法人のみ紹介します。
必要書類は、以下①〜④全ての書類です。①、③は持続化給付金の申請と似ています。家賃支援給付金の申請では、②の賃貸借契約情報と④の誓約書が追加されました。
①売上情報
以下(1)から(4)すべての書類を添付してください。
(3)はe-Taxにて申告をおこなっている場合のみ必要です。追加で「その他の必要な書類」に添付してください。
(1)確定申告書別表一の控え(1枚)
(2)法人事業概況説明書の控え(両面)
(3)受信通知(1枚)
(4)申請にもちいる売上が減った月・期間(2020年)の売上がわかる売上台帳など
②賃貸借契約情報
以下(1)(2)すべての書類を添付してください。
(1)賃貸借契約書の写し
(2)直近3か月間の賃料の支払実績を証明する書類
以下のいずれか一種類
・銀行通帳の表紙の写しおよび該当する振込がわかるよう対象箇所に印をつけた支払実績がわかる部分の写し(3ヶ月分)
・銀行取引明細書(振込明細書)
・賃貸人(かしぬし)からの領収書
・所定の様式による、賃料を支払っている旨の証明書
③口座情報
給付金の振り込みをする口座情報として、以下(1)(2)すべての書類を添付してください。
(1)法人名義の口座通帳の表紙(法人の代表者名義も可)
(2)法人名義の口座通帳をひらいた1・2ページ目の両方
④誓約書
申請者は、給付金を受給するにあたり、申請画面において誓約書の内容について宣誓いただきます。あわせて、所定の様式による自署の誓約書の添付も必要となります。
①、③は持続化給付金に関する過去記事が参考になると思いますので、ご参照ください。
家賃支援給付金の対象外となる契約はどんなものがありますか?親族間の貸し借りはダメと聞きました。
給付の対象となる契約は賃貸借契約(土地・建物)です。
賃貸借以外の形式により土地・建物を使用・収益する契約も給付の対象となる場合もありますが、申請内容の確認に時間がかかるようです。
一方、以下のような契約は、賃貸借契約であっても給付対象とならない契約です(一部例外あり)
① 転貸(又貸し)を目的とした取引
② 賃貸借契約の賃貸人(かしぬし)と賃借人(かりぬし)が実質的に同じ人物の取引(自己取引)
賃貸人(かしぬし)が賃借人(かりぬし)の代表取締役である場合や、賃貸人(かしぬし)が賃借人(かりぬし)の議決権の過半数を有している場合などの会社法に規定する親会社等・子会社等の関係にある場合をさします。
③ 賃貸借契約の賃貸人(かしぬし)と賃借人(かりぬし)が配偶者または一親等以内の取引(親族間取引)
7/28 最新情報追記
経産省のHPにQAが追加され、親族間取引は給付の対象外である旨が明記されました。
Q3.賃貸借契約の賃貸人(かしぬし)が賃借人(かりぬし)と実質的に同じ人物である場合(自己取引)、配偶者または1親等以内の親族である場合(親族間取引)は給付の対象となるのか?
自己取引、親族間取引においては、両者は生計を一にしている場合も多く、賃借人(かりぬし)が賃貸人(かしぬし)から賃料不払いを理由として退去等を求められ、事業継続が困難な事態に至る蓋然性は決して高くないことから、家賃支援給付金の趣旨に鑑み、給付対象外としております。
親族間取引とは、賃貸人(かしぬし)と賃借人(かりぬし)が夫婦や親子である場合などをさします。
③の親族間取引については読みにくく、お客様からもよく質問を受けます。給付規定を参照しながら、当事務所の解釈を記載しておきます。
申請者が個人事業主の場合
給付規定(第5条3)
赤色部分:賃貸人(かしぬし)が、申請者(個人)の配偶者や一親等以内の血族若しくは姻族(親、義理親、子供とその配偶者)である場合
青色部分:賃貸人(かしぬし)が法人である場合、その賃貸人(かしぬし)の代表取締役若しくは親会社等(※)が、申請者(個人)の配偶者や一親等以内の血族若しくは姻族(親、義理親、子供とその配偶者)であるとき
申請者が法人の場合
給付規定(第5条3)
赤色部分:賃貸人(かしぬし)が、申請者(法人)の代表取締役の配偶者や一親等以内の血族若しくは姻族(親、義理親、子供とその配偶者)である場合
青色部分:賃貸人(かしぬし)が法人である場合、その賃貸人(かしぬし)の代表取締役若しくは親会社等(※)が、申請者(法人)の配偶者や一親等以内の血族若しくは姻族(親、義理親、子供とその配偶者)であるとき
※ここでいう「親会社等」とは、株式会社の経営を支配している人のことを言います。「支配している」とは、議決権が50%を超えている場合等を指します。
上述の通り1親等以内がNGですので、2親等(祖父母や兄弟姉妹)から借りている場合はOKです。
家賃支援給付金は社宅分も支給対象ですか?
7/28最新情報追記
経産省のHPに下記のようなQAが追加されました。
Q4.社員寮・社宅については給付の対象となるのか?
法人が社宅・寮に用いる物件を賃貸借契約等に基づいて借り上げて従業員を住まわせ、当該物件の賃料を当該法人の確定申告等で地代・家賃として計上しているのであれば、原則として給付対象となります。他方、賃貸借契約に基づいて従業員に転貸している場合は対象外となります。
一見「社宅は対象」と読めますが、社宅賃料の一部を従業員負担としているケースについて言及がありません(このケースがほとんどだと思います)。この点、困ったことにコールセンターでも見解がバラバラしているようです。残念ですが、もう少し情報が出るのを待ったほうが良いかもしれません。
—以下、7月14日時点の記載です—
こちら、7/14時点では要項やFAQで明文表記されていないように見えます。
SNS上では、「コールセンターに聞いたら、従業員が一部負担している場合社宅はNGと言われた」というものが多数ですが、衆議院議員の方が以下のようなツイートをしておられたりもします。
社宅が転貸(又貸し)に該当するかどうかという論点のほか、給付基準額となる賃料等は、「賃貸借契約等に基づき自らの事業のために他人の所有する土地又は建物を直接占有する者が、当該土地又は建物を使用及び収益するために対価として支払う金銭」とされていますので、社宅がこれに該当するかも論点になりそうです。
煮え切らないですが、もう少し情報が出るのを待つのが良いと考えます。
フリーランスで、自宅兼事務所にしています。家賃は、家賃支援給付金の対象ですか?
住居兼事業所については、事業用の地代・家賃として税務申告している部分は給付の対象となります。
ただ、「税務申告している」の定義がやや曖昧で、確定申告している必要があるのか?つまり、2020年1月以降、事業用の地代・家賃として計上する金額を変更した場合にどうなるのか?というようなことは要領等には明記がないように見えました。
この点を7/15にコールセンターに確認したところ、2020年以降に事情があって事業用の地代・家賃計上金額を変更した場合、変更後の金額で申請しても良いということでした。
「税務申告している」とは???という感じですが、コールセンターがこのように回答してますので、変更後の金額で申請することは問題なさそうです。
そもそも、「住居兼事業所の事業用の地代・家賃として税務申告している」金額について、申請時に計上額や計算根拠を確認するための証拠書類の提出は求められていません。この辺り、(現時点では)、ガチガチに証拠書類の提出を求めるのではなく、ある程度申請者を信頼した運用になっているように思います。
2020年4月から事務所を借りました。支給の対象ですか?
2020年3月31日の時点で有効な賃貸借契約があることが条件ですので、2020年4月以降に契約を締結した場合は対象外です。
また、申請時点ですでに契約解除している場合ももちろんNGです。
他の条件は下記を参照。
大家(貸主)との関係で気をつけることはありますか?
家賃支援給付金が支給されると、事務局から大家(貸主)に通知がいく仕組みです。
ここで問題となりうるのが、居住用として契約していたケースです。
居住用で貸しているはずなのに事業用で利用していることがわかった場合、貸主によっては、契約違反として契約内容の変更や契約解除を求めてくる可能性がゼロではないと思います(客商売でお客さんが出入りするようなものでなければ、よっぽど問題にはならない気もしますが・・)
また、居住用の契約の場合、消費税は非課税として契約されているはずです。この点も、実際は居住利用ではなく事業利用ということが判明したら、貸主から消費税がプラスされた契約に巻き直しを求められる・・・可能性はゼロではありません。
フリーランスとして活動していますが、雑所得として確定申告していました。この場合は家賃支援給付金の支給対象外ですか?給与所得はどうなりますか?
7/14現時点では、雑所得と給与所得は支給対象外です。
ただし、ゆくゆくは給付対象者を拡大する方向のようです。
7/14時点ではまだ申請要領等詳細が公表されていませんので、続報を待ちたいと思います。
2019年に創業したばかりだから比較する去年の売上がない。家賃支援給付金はもらえない?
2019年5月~12月に設立した法人は、創業特例が使える可能性があります。
創業特例では、2019年の設立日から2019年12月31日までの間の平均売上を申請にもちいることができます。
コロナ休業の影響で資金繰りが厳しく、家賃が未払です。滞納の場合も家賃支援給付金の対象となりますか?
申請には、申請前の 3 か月間、賃料などを支払っている実績が必要ですが、賃貸人(かしぬし)から賃料などの支払いの免除または猶予を受けている場合や、支払いを滞納している場合でも、例外⑨の規定を使えば支給を受けることができます。
ただし、この例外による場合は、最低でも申請日から 1 か月以内にひと月分は賃料を支払っていることが必要となります。何とか1ヶ月分は家賃を支払いましょう。
例外規定を利用する場合、必要書類が増えます。
支払免除等証明書は申請サイトの資料ダウンロードページで雛形が公開されています。貸主から証明書にサインをもらう必要があり、少しハードルは高いですがチャレンジしていただく価値はあると思います。